──サンデマンは鼻息を漏らし、巨体をずらして、私が彼の食べるものを持っているか見ようと頭を振り向けた。私はポールの厩舎にはかならずリンゴをいくつか持ってくることにしており、今日も例外ではなかった。サンデマンはうれしそうに青リンゴをむしゃむしゃと食べ、寝藁に唾液とリンゴのかけらを落とした。どちらにとっても満足のいくふれあいのあと、私は彼にお休みを告げた。首を軽くたたいてやると、それに応えるように、サンデマンが頭を縦に振った。

（『審判』より）

──私は、首筋を叩いて、お前はすばらしいやつだ、といった。馬具室からリンゴを二つもってきて与えると、柵囲いの放牧場へ連れて行った。彼は、大歓声を浴びながらゴールをめざしてチェルトナムの上り勾配を上って行ったとき以来、あんなに全力疾走をして気分が高揚したことは一度もなかった。柵の中に放すと、明らかにそうとわかる誇らしそうないななきを発して、明け二歳馬のようにばねのきいた足どりで走って行った。

（『転倒』より）

──「スクェルチは、扱いやすい馬ではないのです。気持ちが動揺してさえいなければ、つねに全力を発揮する馬です。あの馬には、物静かに乗っていなければなりません。鞭が当たったら、走るのをやめます。締めつけと、手綱をかすかにあおること、それに、騎手の声にしか反応しないのです」

（『査問』より）

──私は数多くの馬に乗ってはいるが、毎日毎日、同じ馬と顔を合わせるのは彼が始めてである。彼は私の体の大きさと騎乗技術にあっている。私のことがわかるのはまちがいなく、毎朝運動に姿を見せると、彼は安堵のため息をつくようにすら思える。私たちがウィンカントンのレースで勝ったのは、互いに相手を知り、信頼しているからであり、私がゴール前で最高のスピードを要求すると、彼は過去の経験からなにが必要なのかを理解し、ついに優勝したことにはっきりと歓喜しているようだった。

（『騎乗』より）