仲間からは“神のささやき”と呼ばれる、自らが危機に陥りそうな状況を迎えると事前に察知する能力を持つジェームズ・シェリー中尉は、チタン製外骨格を装着し、ドローン経由でハンドラーからの指示を受けて作戦行動を取るアメリカ陸軍接続戦闘分隊（LCS）の分隊長としてアフリカ西部サヘル地域に敷設されたダッサリ陣地で反政府勢力の動向を伺っていたが、強烈な不安感に襲われ部下に退避命令を出した途端戦闘機からの空爆を受ける。
爆撃が続いているにも関わらず、逃げ遅れたひとりの部下を救出に向かったシェリーは爆発に巻きこまれ、その部下を救えなかったうえ自らも膝から下の両足を失う重傷を負ってしまう。
陸軍に身を投じることになった事情により、除隊したら刑務所行きが待っていることから、シェリーは実験中の最先端義足を装着する医療が受けられ、前線勤務も続けられるという申し出を受け入れる…。
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ローカス賞第1長編部門を受賞した経歴を持つリンダ・ナガタによるミリタリィSFです。
外骨格型パワードスーツに遠隔地にいるハンドラーからの指示を中継するドローン、脳内科学物質の制御による心理的ケアを受けられる電子帽体等々、実現性の高そうなガジェットを導入している、さほど遠くない近未来における軍隊のいち分隊長を主人公にしたミリタリィアクションものとして、戦術行動の描写や軍人の行動様式といったベイスがしっかり描けていて読み応えがあります。
その上で3部作の序章として描かれているためまだ全貌は明らかになっていない、クラウド上に自然発生的に誕生したと思われる、“レッド”と呼ばれるなんらかの意図を持ったプログラムが主人公のシェリーに対して一種の予知能力を与える、というハードSF要素が上手く絡み合ったミリタリィSFに仕上がっていて、「レッドの目的は？」「なぜシェリーなのか？」等々、色々と提示され持ち越されている謎について解き明かされるであろう今後の展開が楽しみなシリーズです。
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