かつてガブリエル・アロンがその命を救い、その後も友情を育み続けたローマ教皇パウロ7世──ピエトロ・ルッケージが教皇宮殿内で亡くなっているのが発見される。
しかし、私用で宮殿を離れていた教皇の個人秘書のルイジ・ドナーティは、遺体の発見者であるドメニコ・アルバネーゼ枢機卿が、自分宛に連絡をしたなどという見え透いた嘘を付いたことや、アルバネーゼから伝えられた発見時の状況に不自然な点が多いことから教皇の死に不審の念を抱いたため、妻キアラの強い薦めで家族とともにヴェネツィアで休暇中だった旧友アロンに連絡を取る。
ローマでドナーティと落ち合ったアロンは、ドナーティから教皇が逝去した夜の詳細に加え、教皇の居室の警護についていたニコラウス・ヤンソンというスイス衛兵が行方不明になっていることを聞かされると、ドナーティに対する友情からヤンソン探しに手を貸すことに同意する…。
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＜美術修復師ガブリエル・アロン シリーズ＞の第20作です。
やはりこのシリーズは反ユダヤ主義や歴史的遺物を事件の背景に据えると著者の筆のノリが良い気がするし、ここ数作よりエンタメとしての深みが増しているというか、知的好奇心を刺激する度合いが高くなっているように感じます。
ローマ・カトリック教会の教義と信条を根底から覆す『ピラトによる福音書』と呼ばれる、イエス・キリストを磔刑に処したポンティオ・ピラトの手記、などという、キリスト教圏では物議を醸しそうな大風呂敷を広げた稀覯本の探索行の割りにはスムーズというか謎解き要素薄めで、しかもこのシリーズには珍しく「すこしふしぎ」な力も借りての発見には食い足りなさを感じてしまったので、帯の「これが新たな『ダ・ヴィンチ・コード』だ！」はやや誇大広告かと（笑）。
とはいえ、ヨーロッパにおける反ユダヤ主義の高まりを背景にした、ローマ教皇暗殺の陰謀に迫るスパイスリラーとしての面白さはシリーズの水準は充分に保っていると思います。
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