H県警察本部のウェブサイトに設けられた未解決重要事件の情報を受け付けるメールアドレスに、1年前に県内の本郷市にある料亭＜冬湖楼＞で発生した、県最大の計測機器メイカー＜モチムネ＞の副社長、本郷市市長、東京の弁護士、県内最大手の建設会社社長が銃撃され、頭部を撃たれ意識不明の重体の＜モチムネ＞副社長を除く3名が死亡するという凶行が発生。その現場から姿を消したため事件の関与を疑われ、重要参考人として手配されていた弁護士秘書の阿部佳奈を名乗る者からのメールが寄せられる。
メールの内容は、事件現場に居合わせた者しか知り得ない事実が書かれていたため、阿部本人からのメールであることは間違い無さそうだが、彼女がその場から逃走し通報もしなかった理由として、H県警のことが信用出来ないため、新宿警察署組織犯罪対策課の佐江の保護下であれば出頭して事件の事について話す用意があると言う…。
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新宿署のもう一人の一匹狼刑事、佐江が活躍する＜狩人シリーズ＞第5段です。
前作『雨の狩人』で佐江が心身共に疲弊しきっていたのでシリーズ継続は半ば諦めていたのですが、こうして新作が読めてなによりです。
事件・犯罪者のスケール的にはこれまでより小粒ではありますし、「阿部佳奈」の背景事情はやや盛り過ぎというか込み入ってる割りにリアリティの面で疑問符が付きますが、相変わらずの一匹狼ぶりと佐江なりの筋の通し方はたっぷり味わえますし、リーダビリティ的にはこれまでのシリーズと遜色のない、巻を措く能わずなえびせん本です。
加えて今回は、H県警のルーキー刑事川村が佐江のパートナーとして捜査にあたり、佐江の信念にシンパシィを感じたがゆえに県警の間で板挟みになりつつも、共に修羅場を潜ることで一皮むけるバディものとしての色合いが濃いのが良いアクセントとなっています。
佐江が復職を決意したことでどうやらシリーズ継続は確定らしいし、そろそろ新宿鮫の存在を匂わすだけではなく共闘するエピソードを書いてくれませんかねぇ？
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