エレインが通い始めて2年ほどになる元売春婦が集まる自助グループで知り合い、AAで言うところの助言者（スポンサー）的役割を果たしているエレン・リップスコームから、客だった男に悩まされていることを相談されたことから、エレインはスカダーにエレンを引き合わせる。
ポールと名乗るその客は、エレンが客を取らなくなった後は彼女のことを独占出来ると思い込んでいるばかりか、彼女の意思など構わず自分の性癖を満たそうとしており、すっかり怯えたエレンは着の身着のまま住んでいたアパートメントから逃げだし新たな住まいを見つけるが、ポールは携帯電話にしつこく連絡してメッセージを残し続け、その内容がエレンに危害を加えることをほのめかす内容にエスカレイトしたことからスカダーに相談することになったのだ。
エレンが元売春婦ということもあり、警察がまともに取り合うとも思えないことからスカダーは問題解決に手を貸すことにする…。（「石を放つとき」他12篇）
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既出の短編を集めた「夜と音楽と」と新作の中編である表題作を合本した日本独自企画の＜スカダー シリーズ＞第18段です。
短編の方は初出の『おかしなことを聞くね』や『やさしい小さな手』を読んでいるのでそこそこ既読のはずなのに、結構忘れていて初見のように新鮮に読めたという、作中のスカダー同様老化を実感させられる事案発生…(＾ω＾ ;)。
それはさておき、新作の「石を放つとき」は、『すべては死にゆく』後の時間軸のエピソードが書かれることは無いんじゃないかと諦めていただけに、ファンにとっては新作が読めること自体にプラスされる嬉しいプレゼント。
しかも、もはや調査のために街を歩き回れば膝が痛みを訴えるような老境に入った私立探偵で果たしてハードボイルドは成立するのか？ 主人公としてのオーラは維持出来るのか？ といった懸念を正直抱いていましたが、まさにその老いが醸し出す悲哀をハードボイルドのエッセンスに昇華させ、ぶっちゃけ謎解きや問題解決面ではカタルシスは用意されていないにも関わらず、これまでスカダーと関わりのあった懐かしい登場人物の名前が出てくる総集編的要素も相まって、味わいのあるエピソードに仕上げたお手並みはさすがの一言です。
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