早くに両親を亡くし、双子の弟と共に叔父夫婦に引き取られたものの叔父とは折り合いが付かず、短気な性格も災いして暴力沙汰ばかり起こしていた加納 将は、高3の秋に起きた事件をきっかけに家を飛び出し、関西でヤクザまがいの生活を送った後アメリカに渡り、そこでも暴力沙汰を繰り返したことから逮捕寸前まで行き、刑務所行きを免れようとアメリカ陸軍に入隊し、アフガニスタンでの実戦経験を経た後除隊して日本に戻ってきた。
両親の墓参りのため小豆島を訪れた将は麻薬取締官の菅下から接触を受け、弟の良が麻薬取締官となり、近年暴力団とは無関係のルートで麻薬の密売網を築いている組織に用心棒として潜入したものの、1ヶ月近く消息を絶っているという話を聞かされる。
菅原は容姿が瓜二つの将に、弟の振りをして組織に潜入して良の行方を探すと共に、捜査情報が流れていることが疑われるため、組織の全容を暴きスパイを炙り出す手助けをして欲しいと頼む…。
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大沢在昌のノンシリーズのハードボイルド小説の新作を読了。
大沢クラスともなると手癖で書いてもそれなりに読めるものに仕上がっていますが、さすがに「頭を打って記憶喪失になった」の一本槍で通すのは無理筋じゃね？ 感を含め、「双子の片割れが麻薬組織の潜入捜査に挑む」という設定に期待する、ひりひりするようなスリリングさの面ではイマイチだし、双子の弟との絆や確執的なエモさも薄味。さらに第75レインジャー連隊第2大隊出身という背景から、クライマックスでは戦闘能力の高さを発揮したアクションを披露してくれるのかと思いきや、麻薬組織の殺し屋との対決もあっさりと片付いてしまってその面のカタルシスも弱かったりと、それなりに面白くは読めますが、大沢に対する期待値が高いだけに物足りなさの方が目立ってしまいました。
一見脳筋に見える警視庁の女刑事大仏も、ルックス・立ち居振る舞い的にインパクトがあって、脇役でおくにはもったいない味を出しているだけに、もうちょっとキャラを掘り下げて加納とのバディもの要素を押して欲しかったし、思わせぶりに傍点付きで登場する大仏の上司“課長”は、自分が読んでないだけで、読む人が読めば分かる大沢ワールドの誰かなんでしょうか？ 結局匂わせるだけで正体不明のままだったのでめちゃめちゃ気になってしましました。
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