アドルフ・ヒトラー、連続殺人犯、小児性愛者──社会が忌み嫌い邪悪と断罪するような行為を行う人々は、そうではない我々といったい何が違うのだろうか？ そもそも「悪」とはなんだろうか？
悪と呼ぶものの本質を理解しようとしないままレッテルを貼り遠ざけるだけでは世の中は良くならない。神経科学や脳科学、社会実験結果の例から、我々が抱いている「悪」に対する誤解や偏見を解きほぐすことを試みた科学啓蒙書。
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『死のテレビ実験』にも通じる興味深いテーマだったので手を出してみました。
「“邪悪な”行いに手を染める者とそうでない者との間に科学的に明確な線引きなど存在しないのだから、行動だけを見て理解する努力を怠ったままレッテル張りをするのはやめよう」という趣旨・総論には、もちろん納得も賛成も出来つつも情緒的に腹落ちしきれない面が残ったというのが正直なところですが、前書きで著者が宣言しているように、一定の回答を与えようとするものではなく、思考停止に陥らない切っ掛けとなるべく書かれた本なのでそこはしょうがないのでしょう。
とは言え、扱う話題が広範なテーマに及ぶため、どうしても議論が広く浅くで終わってしまい、著者の結論ありきで各種論文を抽出してるように見えてしまったのは、それこそ読み手の偏見でしょうか？
参照している実験の数々は興味深く、有名なトロッコ問題にもヴァリエイションがあり、セカイ系の「世界かヒロインか」でヒロインを選んでしまう選択は、そう身勝手な判断ではないことがデータで明らかになっていたり、「多くのテロ対策は有効性を裏付ける根拠が無いまま実施されてる」「テロリストによるテロ行為の実行と（信仰上の）信念の強さには繋がりが無い」等々興味深いトピックはありましたが、目から鱗の知見が得られたかと言うと、正直食い足りさが残った本でした。
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