元アメリカ陸軍第75レインジャー連隊第1大隊出身でDIAの作戦要員としてシリアで諜報活動に従事していたマット・ドレイクは、自分が運用していた資産からの救助要請に応えようとしたがシリアの武装勢力の襲撃に遭い、相棒のフロド・ケイツと共に半死半生の怪我を負いながらもなんとか生き延び帰国するが、死なせてしまった資産の家族の幻と断続的な手の麻痺に悩まされるようになってしまい、自分の精神状態を恐れたドレイクは、DIAを辞する一方で妻の元にも帰ることもせず放浪生活を続けていたが、DIA作戦本部長のジェイムズ・グラスから強制的な召集を受ける。
DIA本部でドレイクは、CIAの準軍事作戦要員ティームがシリアの科学兵器研究所を急襲したが敵襲を受け撤退することになり、その際オペレーターのひとりが未知の化学兵器に汚染して死んだが毒性の物質が全く検出出来なかったこと、かつてドレイクがリクルートしようとしたが断られた、“アインシュタイン”というコードネームを与えたパキスタンの兵器科学者から接触があり、その未知の化学兵器の情報をアメリカ側にもたらすが、ドレイクが迎えに来ることが条件であると伝えてきたことを知らされる…。
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＜暗殺者グレイマン シリーズ＞のマーク・グリーニーや＜ジャック・リーチャー シリーズ＞のリー・チャイルドが賞賛し、＜ジャック・ライアン・ジュニア シリーズ＞に加わることになったという新進気鋭の作家のデヴュウ作です。
軍事畑を歩んできた経歴の持ち主だけに、ドレイクのシリア潜入以降の戦闘描写や兵士としての心理描写はさすがの生々しさ・迫真性がありますし、ドレイクが“アインシュタイン”の指名で作戦に巻き込まれることになったカラクリもひねりが効いていて、軍事スリラーとしてそれなりに買える点はありますが、いかんせんそこに至るまでの陰謀パートがチープ。シリア内線への介入を嫌い、ドレイクの作戦を邪魔するため策を弄する大統領首席補佐官と政治的野心に燃えるCIA長官との丁々発止も薄っぺらく見えてしまうし、その首席補佐官がいかに自分の信念のためとはいえロシアに借りを作ってタダで済むと思うのも謎過ぎます。
キャラクターの深掘り描写や場面描写についても、物語に厚みを与える役割よりは冗漫さを感じてさせてしまっていたり、ドレイクの憎まれ口もユーモアのセンスやドレイクの不屈さを表現できてるとは言いがたいし、ドレイクとフロドのやり取りも、バディものとしての胸熱さを醸し出せていない等々、作中で名前を挙げている軍事スリラー界の諸先輩の作品をリスペクトし、勉強したのは伝わりますが、作者が意図したほどの効果は上げられておらず、筆力不足の方が目立ってしまっているのが惜しかったです。
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