懇意にしているシンガーのサポートメンバーとしてロサンゼルスの高級ホテルのクラブでギターを演奏していたデズモンド（デズ）・アロイシウス・リメリックは、セッションを終えて部屋に戻るため乗ったエレヴェイターで、ボディガードを連れた魅力的な女性と乗り合わせ、演奏を褒められたことから思わず一杯飲みに誘うがやんわりと断られてしまう。
部屋でひとりくつろいでいたデズが窓辺でロスの夜景を楽しんでいたところ、向かい側の建物にスナイパーが潜んで1階エントランスを狙っていることに気付く。さらにホテルの前に駐まったヴァンから黒装束でプロフェッショナルな身のこなしの男たちが展開し、ホテルの電話はおろか携帯電話の電波まで通じなくなっていることから、デズはエレヴェイターで出会った女性が狙われている可能性を危惧し、彼女がエレヴェイターを下りたフロアに様子を見に行くと、案の定襲撃者たちがボディガードを倒し女性を連れ去ろうとしている現場に出くわしたことから、持てるスキルを駆使して3名の襲撃者を瞬く間に倒し、わざと騒ぎを大きくして警察がやってくるよう仕向け窮地を凌ぐ。
デズはロス市警に拘束されるが、救われた女性が当局に手を回したため早々に解放され、刑務所の前で待っていた車に乗せられアメリカ有数の民間軍事会社であるトリトン・エクスペダイターズ社の本社に連れて行かれると、CEOのコンスタンチン・アレキサンドレアスに引き合わされ、ようやく誘拐されかけた女性が彼の娘ペトラであったことが判明する…。
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「分厚い胸板に太い腕、短いがに股の脚」という、まるで超人ハルク（あるいは訳者の言うように3悪人のワルサー）のような、決してヴィジュアル系とは言えないワイルドな外見通りの腕っ節で大抵のことには動じない胆力を持つタフガイ。かつピッキングやハッキング、トラップのスキルを縦横無尽に振るって軍事作戦の侵入から脱出までをサポートする“ゲートキーパー”として傑出した能力を持つ一方で教養もあり茶目っ気たっぷりという、なんともユニークで魅力的な主人公であるデズというキャラクターを生み出したという時点でもう大成功。
そんなデズもさることながら、デズと行動を共にするペトラ、彼女のハウスキーパーのアロンゾ、デズを逮捕したロス市警の警察官や事態の中心となる街の市議等々、デズを取り巻くサブキャラ達もなんとも魅力的で、その機知とウィットに富んだ会話だけでも楽しめるキャラクター小説として実に良く出来ており、かつ、デズの無双ぶりの痛快さが際立っていることから、事件のスケールの大きさの割りに落としどころの粗いプロットにも目を瞑れてしまう痛快冒険小説でした。続編も書かれているようなので邦訳が楽しみです。
ただし、この邦題はネタバレのうえB級映画感溢れていてだいぶ損をしてると思うんですけどねぇ。なんで原題の通り『ゲートキーパー』にしなかったんでしょうか？
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