中国残留孤児二世・三世を中心とした互助コミュニティから生まれた犯罪組織＜金石＞と対峙することになった覚醒剤密輸事件で、鮫島から情報を得ようと公安部公安総務課から新宿署に送り込まれていたが、捜査の過程で身分が発覚後、休職を経て本庁警備部に転属になっていた矢崎が鮫島の元を訪れ、捜査の過程で矢崎のことを襲撃した、＜金石＞の中でも“八石”と呼ばれハブ的な役割を担うメンバーのひとりである高川 和が接触してきて保護を求めてきたが、公安総務は高川が関わっている覚醒剤の密輸には興味が無いため矢崎は＜金石＞との関わりが深い鮫島に相談を持ちかけたと言う。
課長の阿坂に許可を得た上で矢崎とともに高川と会った鮫島は、これまで上下関係の無いネットワーク型の組織だった＜金糸＞を、“八石”のひとりである“徐福”と名乗る者が、自分を頂点としたピラミッド型へと改変しようとしており、“徐福”の方針に逆らう者には“黒石”（ヘイシ）と呼ばれる殺し屋を差し向けていると言う話を聞かされる…。
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前作で登場した中国残留孤児ネットワーク＜金石＞との対決を引き続き描いているため、事実上『暗躍領域』の後編というか解決編にあたるシリーズ第12作です。
シリーズ屈指の異様な存在感を放つソシオパスな殺し屋“黒石”の不気味な思考形態・行動様式がカットバックで描かれる構成も相まって、筋運びそのものはなかなかスリリングですし、自らの警察官としてのポリシィに反しない限りは実に頼りになる上司であることが明らかになりつつある阿坂課長の存在感といった、長期シリーズならではのキャラクターの関係性の進展具合も楽しめるなど、シリーズとして、警察小説としての水準はそれなりに保っていると思います。
一方で、“金石”を支配下に置こうと暗躍する首謀者“徐福”の正体とか動機が、明かされてみれば2作に渡って描いた割りにはショボく竜頭蛇尾感の大きかった点は大幅マイナスポイントでした。
犯罪事態の有り様や新宿という街自体の変容もあって、もはや新宿が舞台として全然関係なくなってしまい、「新宿鮫」の看板に偽りありなのも残念。
［余談1］そろそろ双方の作品で匂わせるだけでなく、鮫島と佐江が共闘するクロスオーヴァー企画をやってくれませんかねぇ？
［余談2］冒頭の鮫島と矢崎が高川と会うシーンでモロ地元が登場してビックリ。まさか『リコリス・リコイル Ordinary days』に続き新宿鮫でも地元が聖地になるとは（笑）。
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