タッカー・ウェインは、アメリカ陸軍レンジャー部隊所属時に参加した作戦で、自らが訓練しハンドラーとして行動を共にした軍用犬2頭のうち1頭を失うという経験がトラウマとなりPTSDを発症したことから除隊し、フリーランスでボディガード仕事を請け負って糊口を凌いでいた。
そんなウェインがウラジオストクでロシアの資本家のボディガード役を務めていたところに、以前作戦を手助けした歳の手腕を買われてスカウトされたことのある、アメリカ国防総省内の秘密特殊部隊シグマフォースの司令官ペインター・クロウから連絡が入り、ロシアの製薬王とも称されるロシア製薬業界の立役者アブラム・ブロコフが国外脱出を望んでおり、折良くウェインがロシア内にいることを掴んだことからブロコフの出国をサポートするよう依頼してきた。
ブロコフが住むペルミに向かうためシベリア横断鉄道に乗ったウェインは、フェリス・ニルソンという魅力的な女性と知り合うが、念のためシグマフォースの支援担当を通じて身元を照会したところ、ニルソンはスウェーデンの特殊偵察部隊SIGの女性隊員で、狙撃の名手であることが判明する…。
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ジェームズ・ロリンズの＜シグマフォース シリーズ＞のスピンオフで、ソフトバンク文庫からリリースされた＜トレジャーハンター シリーズ＞でクライブ・カッスラーの共著者を務めたり、＜ジャック・ライアン シリーズ＞の『デッド・オア・アライヴ』でトム・クランシーの共著者として名を連ねた経歴を持つグラント・ブラックウッドとの共著で書かれた新シリーズ第1作です。
過去の歴史的事件の影に埋もれた謎（お宝）が現在の世界的規模の危機に繋がり…というプロット・構成が＜ダーク・ピット シリーズ＞みたいだな思ったら、実際カッスラーの共著者だったとは知りませんでした（ピットシリーズは息子のダーク・カッスラーの共著になったあたりで挫折、その他のシリーズもスルーしていたので）。
世界を滅亡させかねない種子を求め、ロシアからアフリカと世界を股にかける主人公のタッカーと相棒のK9ケインが、危機また危機を潜り抜けていくというストーリィ展開自体は、冒険小説の王道展開ではあるのですが、話のスケールの割りには予定調和というかB級感の方が強くて、ピットシリーズの劣化コピーにしか感じられなかったのは、章ごとにロリンズとブラックウッドで担当を分けて書いた上で校閲しあうという執筆スタイルの弊害か、はたまた共著者レヴェル（しかもそれぞれ1作止まり）で終わっている作家が参加した弊害なのでしょうか？
そしてなにより、K9ものに期待するタッカーとケインのバディものとしての魅力もイマイチで、ケイン視点の描写もあるものの、ロバート・クレイスの『容疑者』に遠く及ばないキャラ造形の中途半端さにはガッカリ。
文体面でも、タッカーのモノローグをわざわざ山括弧で括る意味が感じられないし、セリフ自体もダサいので煩わしいだけでした。
そして重箱の隅つつきですが、この手のジャンル小説でワルサーP22を「半自動小銃」と訳されると一気に萎えるので訳者と校正・校閲者には猛省を促したいです。
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