イスラエルが密かに資金を拠出してウィーンで運営している＜戦争犯罪調査事務所＞が爆破され、事務所の経営者エリ・ラヴォンは瀕死の重傷を負い、2人の女性アシスタントが死亡する。
アルカイダ系のイスラム原理主義組織が犯行声明を出していたが、事務所に届けられた事務用パソコンに爆弾を仕掛けるという洗練された手口から、名目上は引退しているが、イスラエルの諜報機関＜オフィス＞の実質的な支配者アリ・シャムロンは、犯行を企てた者は別にいると睨み、ヴェネチアのサン・ジョヴァンニ・クリソストモ教会でジョヴァンニ・ベッリーニ作の祭壇画の修復に勤しんでいたガブリエル・アロンを呼び寄せて真相解明の任を与える。
13年前、車に仕掛けられた爆弾により幼い息子ダニの命を奪われ、妻のリーアが精神を病むに至ったまさにその地であるウィーンに行くことに対する心理的抵抗感と、身分が発覚する危険性を帯びていたことからアロンは、シャムロンからの指令に難色を示すが、生死の境を彷徨っている親友のためアロンはオーストリアへ入国する。
アロンがかつて妻が入院していた病院にラヴォンを見舞に行くと、マックス・クラインというの老人が近づいてきて、ラヴォンが殺されかけたのは、アウシュビッツでユダヤ人を迫害していたSS将校をこの地で見かけたことから＜戦争犯罪調査事務所＞に調査を依頼した自分の責任だと名乗り出る…。
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＜美術修復師ガブリエル・アロン シリーズ＞のナチス3部作の第3作…なんですが、順番を取り違えて2作目の『告解』を飛ばしてしまったため、序盤で作戦遂行のパートナーとなるキアラにアロンが心惹かれるくだりで「ん？『イングリッシュ・アサシン』で恋仲になったアンナはどうした？？？」となってしまいました(^_^;)。
とはいえ、それ以外ストーリィ上、特に『告解』を踏まえていないと辻褄が合わないようなことは無いので一安心でした。
アロンの母親の強制収容所での体験を通じて、ホロコーストにおけるナチスドイツの非道な行為に、より踏み込んだ内容となっているため、当然ながら作品のトーンは重めですが、ナチスに荷担した国家として、『イングリッシュ・アサシン』ではスイスを槍玉に上げていましたが、本作ではオーストリアの罪を追求するジャーナリスティックな視点と相まって、ドキュメンタリィのような読み応えが味わえる、このシリーズの持ち味は堪能出来ます。
一方で、アロンが窮地に陥った際の脱し方がアロン本人のスキルや才覚というよりは第3者頼りのパターンが多いので、冒険小説としては食い足らない面はあるし、謎解きには重きを置いていないので、ミステリィとしてのカタルシスも弱いですが、アロンが母親に対して長年抱いていた距離感というかわだかまりというかに折り合いを付ける、三部作を締めくくるのに相応しい深みは感じられました。
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