アメリア・サックスは、未詳40号と名付けた殺人犯を買い物客で賑わうショッピングセンターまで尾行していた。ところが応援が到着し、いよいよ逮捕しようとした矢先、エスカレーターの降り口のステップが開いて出来た穴の中に男性客が一人落ちてしまう。
エスカレーター事故に気を取られている間に未詳40号の姿を見失ってしまったため、アメリアは人命救助を優先させ、男性を救おうと穴の中に潜り込むが、
男性は非常停止ボタンを押されてもなおも回転を続ける歯車に巻き込まれて致命傷を負っており、アメリアがモーターのコイルに向かって発砲して止めた甲斐無く亡くなってしまう。
事故の被害者のグレッグ・フロマーから今際の際に懇願されたこともあり、妻子への最後のメッセージを伝えるためフロマー宅を訪れたアメリアは、グレッグが生命保険を解約してまで慈善事業にのめりこんでいたため家賃を滞納するほど生活が逼迫していることを知り、とある事件をきっかけに刑事事件の捜査から手を引くことを決め、ニューヨーク市警顧問の座を退いたリンカーン・ライムに、エスカレーターの製造メイカーに対する損害賠償訴訟のための検証を依頼する…。
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＜リンカーン・ライム シリーズ＞の第12段です。
今回ライムティームが対峙する連続殺人犯の凶器は、“モノのインターネット／IoT（Internet of Things）”が喧伝される時代ならではの、ワイヤレスでアクセス可能な組み込みシステムが搭載された工業製品の数々。
まぁ、さすがに「ここまで広範囲な工業製品に使われる汎用組み込みコントローラーあるかぁ？」という疑問は残りつつも、思わぬ物が凶器と化し、次々と被害者達に襲いかかっていくスリリングさには、機を見るに敏なディーヴァーらしさが出ています。
一方で、明かされる犯人像や動機が、これまでの犯人達に比べればある意味まとも（？）──というか、なんなら理解の余地すらある──なものなので、シリーズの中ではどんでん返しのインパクト的には弱く、むしろ刑事事件から手を引いたライムとアメリアのすれ違いやプラスキーの怪しげな行動の真意、かつてアメリアと心を通わせながらも汚職警官であることが暴かれ刑務所送りとなったニック・カレッリが再登場して無実を主張するといった、平行して描かれるサブストーリーの行方の方が正直気になってしまい、少々散漫な印象が残る面も。
と言いつつも、決してデキが悪いというわけではなく、ディーヴァーメソッドに振り回されるジェットコースターノベルとしての安定感はさすがのクオリティで、一気呵成に読めてしまえます。
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