マンハッタンのダイヤモンド地区にジュエリー・ダイアモンド販売の店舗を構えるパテル・デザインズで強盗殺人事件が発生する。オーダーしたダイヤモンドを受け取りに訪れたカップルのために店のセキュリティを解除した隙を突いて押し入った犯人は、店のオーナーで、一流の腕前で業界では有名なダイヤモンド研磨職人のジャスティン・パテルとカップルをカッターナイフで拷問した上で殺して逃げ去っていた。
凄惨な事件が観光や景気へ及ぼす影響を懸念したニューヨーク市の役人達が表だった捜査を嫌ったため、通常なら殺人や強盗は扱わない市警本部の重大犯罪課にお鉢が回ってきたことから、担当となったロン・セリットーはリンカーン・ライムに事件を持ち込むことにする。
現場の鑑識に当たったアメリア・サックスは、残された物証をもとに総額500万ドル相当のダイヤモンドが盗まれたらしいこと、この日の面会予定としてスケジュール帳に残されていた＜VL＞というイニシャルの人物が犯行を目撃した可能性を探り当てるが、当の目撃者であるパテルの弟子ヴィマル・ラホーリは、警察に保護を求めること無く行方をくらましていた…。
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＜リンカーン・ライム シリーズ＞第14弾は、ダイヤモンド業界の闇を相手にライムティームが奮闘を見せます。
ダイヤモンドの加工プロセスや業界の裏事情のような蘊蓄を盛り込みつつ、ライムが微細証拠を手がかりにダイヤモンド加工職人殺害事件の真相に迫っていく過程は、もはやディーヴァーレヴェルの作家ともなれば、手癖で書いてもそれなりのものに仕上がるので、決してつまらなくはないのですが、ライムティームに協力者として現れた人物が実は…とか、ライムとアメリアの夫婦喧嘩の顛末は…といった工夫こそあるものの、全般的な緊迫感の持続という点においては一歩譲るというのが正直な感想。
犯人像的にも、署名的行動こそやや猟奇的なものの、殺害方法がことさら斬新とか悪趣味とかな凝りようをしているわけではないので、これまでの犯罪者達と比べるとインパクトに欠けるし、犯行の目撃者であるヴィマルが、曰くありげに逃げ回っていた割りには特に仕掛けがあったわけではないところにえらい肩すかしを食らってしまったのも、今一歩という印象に拍車をかけた形でした。
さらに、「犯人Aは犯人Bの手のひらで踊らされてましたが実は犯人Bも黒幕の手のひらの上でした〜」というプロット上の構造は毎度のことだし、そこが腕の見せ所でもあるので構わないのですが、またもや真の黒幕がウォッチメイカーなのは正直かなり興ざめでした。
ディーヴァーはよほどウォッチメイカーに思い入れがあるようで、彼をライムの終生のライヴァルに設定するのは構わないのですが、直接対決による頭脳戦ではなく、後出しジャンケンでウィッチメイカーの存在を明かされても白けるばかりなので、とっとと決着を付けて欲しいのですが…。
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