所属していたアルファル星系の艦隊では自分の能力を発揮出来ないと悟り退役したロバート・ギアリーは、新天地を求めてコロニー移民団に加わり新たな惑星へと降り立つが、スカザ星系からやってきたと称する旧式な警備艇がジャンプポイントから現れ、移民団に対してみかじめ料を要求してきたことがロバートの運命を大きく変えることになる。
軍事的脅威に対応する能力がないコロニーを運営する評議会に助言を求められたロバートは、同じ艦隊に所属していたリン・メルツァーとコービン・トレスと意見を交換し、警備艇をクラッキングして破壊するか、侵入部隊を組織して拿捕するか、あるいは要求に応じるかの選択肢を提示する。
評議会は対抗策を採用すると共にロバートを臨時の大尉に任じ、警備艇をクラッキングする準備と侵入部隊を結成し訓練する権限を与えるが、ロバートに与えられた時間と人的資源はあまりにも少なかった…。
* * * * *
“ブラック・ジャック”ギアリーの時代から遡ることウン百年？＜彷徨える艦隊シリーズ＞の外伝の開幕エピソードです。
人類が新天地を求めて宇宙へと拡散していく一方で地球の統制力や求心力は衰え、それをいいことに傍若無人に振る舞うコロニーを取り締まる力も及ばなくなってしまった時代を背景に、ブラック・ジャックのご先祖が星系からの侵略に晒された植民星を守るために奮闘する新シリーズです。
正篇が海洋冒険小説の伝統（？）に倣って艦や艦隊を率いる責任を負う者の重圧や懊悩、矜持に焦点を当てていたのに対し、こちらは宇宙で戦うロバート、陸戦のメレ・ダーシー、政治面のカルメン・オチョアとロハン・ナカムラら3組の、それぞれ故あって新天地を目指した主要登場人物達が紡ぐ群像劇の枠組みを採用して、それぞれの活躍がコロニー防衛に向かって収束していく見せ方が活きていて、正篇とはまた違った読み応えと魅力を持ったミリタリィSFとなっています。
|
