コロンビア移民として単身アメリカに渡ったカリ・モーラは、一時的滞在許可の不安定な身分に怯えながらも獣医になることを目指し、傷ついた鳥や小動物を保護・治療する＜ペリカン・ハーバー・シーバード・ステイション＞で経験を積む一方で、“コロンビアの麻薬王”と謳われ、1993年にコロンビア当局に射殺されたパブロ・エスコバルがマイアミに残した屋敷の管理人を務めることで生計を立てていた。
ところがその屋敷には、エスコバルが遺した千ポンド──時価にして2,500万ドル相当の金塊が隠されており、しかも迂闊に近づいたり開けようとした者を死に至らしめる罠が仕掛けらていた。
死が迫ってることから金庫の秘密を売ることにしたエスコバルの残党から情報を得た国際的な臓器密売商が、映画撮影を口実に屋敷を借りて金庫を探そうと目論む一方、コロンビアの犯罪組織も虎視眈々と屋敷を狙っていた…。
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ミステリィ界希代のアンチヒーロー、ハンニバル・レクターを生み出したトマス・ハリスの、『ハンニバル・ライジング』以来13年ぶりの新作は、＜ハンニバル・レクター シリーズ＞から決別したノワール小説となりました。
猟奇的なサディストであるハンス・ペーター・シュナイダー（それにしてもハリスは無毛症が好きですね（笑））と、一応仁義をわきまえている犯罪者組織の面々が麻薬王の残した莫大な量の金塊を巡って血みどろの争いを繰り広げるノワール小説としてのリーダビリティは高いし、ハンスのサイコパスっぷりやらエスカルゴの「絶対アカン食材」な秘密、「金庫番」のワニ視点等、計算された野卑さ、グロさ、エキセントリックな描写の数々はハリスらしさを感じられます。一方で、ハリスの小説に期待してしまう重厚感や知的ミステリとしての醍醐味は薄味だし、主人公のカリにしても、少女ゲリラとして育てられたという出自のインパクト含め魅力的ではあるんですが、周囲の犯罪者達のキャラの濃さに埋もれ気味など残念ポイントも目立ち、ハリスに対する期待値が高かっただけに物足りない印象でした。
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