定期的に質流れ品の着物や帯を売りに来る質屋の双葉屋の主人が三島屋を訪れるが、今回持ち込んだ品物の中に黒武という家名と四角に十時を重ねた印入りの半天については、双葉屋に奉公する女中が三島屋にぜひ見て欲しいと主人に預けた品だと言う。
店番をしていた富次郎が父親の伊兵衛に事の次第を伝え、改めて印半天を検分したところ、背の部分に当て布がしてあったため剥がしてみたところ、当て布に「あ」「わ」「は」「し」「と」「め」「ち」と言う一見脈絡の無いひらがなが漆で記されていることを発見すると、双葉屋の女中から変わり百物語を集めている三島屋に対するの謎かけと捉えた伊兵衛は、おちかが嫁いだ貸本屋の瓢箪古堂の勘一に相談することを思いつく。
富次郎が件の印半天を勘一の元に持ち込んでみると、勘一は当て布のひらがなの意味に見当が付くが、推量が当たっているとすると面倒事になるため慎重に調べる時間が欲しいと言うので預けたところ、ひと月ほど経ってから勘一がもたらしたのは、当て布に記されていたひらがなは、お上が禁じている耶蘇教の神を称える唄に由来するものだと言う…（「黒武御神火御殿」他3篇）。
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語り手がバトンタッチして新章が開幕したの＜三島屋変調百物語シリーズ＞の第6弾です。
ブックオフで安くなっていたのを見つけたので久しぶりに三島屋の変わり百物語に手を出しましたが、取り憑いた女性を淫蕩な行動に走らせる怪異によって離散の憂き目を見た一家の悲劇を描いた「泣きぼくろ」、地方の養蚕家に伝わる「女は花見に参加するべからず」という理不尽な禁忌の由来を描いた「姑の墓」、愛する妻子を失って自暴自棄になっていた飛脚が箱根峠を越える際に取り憑かれた亡霊との奇妙な道行きを描いた「同行二人」の3篇の短篇に、摩訶不思議な脱出不可能な屋敷に囚われ理不尽な生き残りゲームを突きつけられた、縁もゆかりも無い出自もバラバラな4人の男女の脱出劇と言う、映画『CUBE』を彷彿とさせるシチュエーションホラーの表題作である中篇の4篇と、相変わらずのヴァラエティの豊かさとイマジネーション溢れる物語が紡がれており、安心安定のクオリティの綺譚集が楽しめましたが、懸念かつ敬遠していた不安は的中、聞き手の富次郎の肝が据わってもいなければ覚悟も足りておらず、変わり百物語の聞き手としていささか力不足な所にイライラを感じてしまうのがネックでした。
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