仕事にあぶれていたレイフ・ダクインは、大学時代の友人であり外交官のハート・シュミットの口利きで交易船のチャンドラー号の第3操縦士としての職にありつくことが出来る。
ダクインが乗り組みフェニックスステーションを出発したチャンドラー号は、同乗したコロニー連合の外務副長官タイスン・オカンポの極秘任務により目的地を変更することになるが、スキップ先でララエィ族の襲撃を受け船を乗っ取られてしまう。
実はこの乗っ取りはオカンポの手引きにより企てられており、オカンポは船と操縦士ひとりをララエィ族に引き渡して他の乗組員は全て救命ポッドで退去するよう命じる。異議を唱えた副長と船長を問答無用で殺害するララエィ族を前に、残された乗組員は止むなく要求に応じるが、船と共に残る操縦士として指名されたダクインは気絶させられ、意識が回復した時には体から脳だけ取り出されてチャンドラー号の制御システムの一部に結合されてしまっていた…（「精神の営み」他3篇）。
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前作『戦いの虚空』で提示された地球・コロニー連合・コンクラーベを巻き込んだ陰謀の全容が明かされる＜老人と宇宙シリーズ＞第6作です。
今回の物語の鍵となる宇宙船操縦士のダクインによる“頭脳戦”（「精神の営み」）、コンクラーベの指導者層で繰り広げられる権力争い（「この空疎な同盟」）、最前線で戦うCDF兵士が直面する任務の質の変化（「長く存続できるのか」）等、様々なレイヤーの登場人物視点で陰謀のあらましを中編と言えるボリュームの3篇で点描したうえで、前作から狂言回し役として活躍するCDF兵士ハリー・ウィルスンが事態を収束させる4篇目の「生きるも死ぬも」で、張り巡らせた伏線を回収する話しの組み立て方や、陰謀を逆手にとって3竦み状態を作り出すことで宇宙に一定の平和を取り戻すという、広げた大風呂敷を畳んだ点は見事で読み応えがありました。
一方でウィルスンという狂言回しはいるものの、5・6で採った独立した短中篇で描く群像劇方式のせいで、これだけの壮大なストーリィを語るにしては語り部の視点があちこちに飛んでしまったことで、やや散漫になってしまったのが残念でした。
巻末におまけとして「精神の営み」のボツヴァージョンが掲載されていますが、なるほどこれを読むと、採用されたヴァージョンの方が話し運びの引きが強いことが分かって興味深かったです。
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