スコットランドの山中で創作活動をしている画家のアリクザンダー・キンロックは、ビール醸造会社を経営する義理の父アイヴァンが、会社の横領事件の発覚が元で、心臓発作を起こして倒れた、との連絡を母親から受け、ロンドンに向かおうとした矢先、自宅前で謎の暴漢達に襲われる。
事件の処理もそこそこにロンドンに向かったアリグザンダーは、義父から権限を与えられ、会社の窮状を救うために事態の収集に乗り出すが、自分の権利を奪われるという妄執に取りつかれた義妹や弁護士の敵意と相対する事になる…。
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もはや、ミステリィファンには秋・冬の風物詩とも言える、ディック・フランシスの新作です。
突然事件に巻き込まれた主人公が、ささいな──しかし、自分にとっては重要な理由から──事件に立ち向かうプロットや、門外漢の分野でも才覚を発揮する主人公、偏執狂的な上流階級の敵、といった人物造形などは、フランシス作品の“お約束”で特に目新しい点はありませんが、事件の過程で迎える別れた妻との和解や、アリグザンダーの伯父、その伯父が所有する宝物の鑑定する女性文学者など、魅力的な脇役とのからみやトリックの妙は相変わらず読ませます。ハデさはありませんが秋の夜長のお供にはもってこいの一冊でしょう。
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