トム・セクストンはシービー（海軍工兵偵察隊）で8年間の兵役服務期間満了と共に退役した後は各地を転々として過ごした末、コネティカット州にあるカナーン・ヴィレッジという片田舎でステラ・カークという女性と運命的な出会いを果たしたことからこの町に腰を据え、金属プレス加工オペレイターとして慎ましくも穏やかな日常生活を甘受していた。
ところが一本の電話がそんなトムの日常を一変させてしまう。電話をかけてきた女性が告げる暗号を解読すると、シービー時代の上官であるジェイムズ・キャリントンとの間に取り決めた救援要請だったことからトムはニューヨークへと向かう。
キャリントンが手順を破ってトムに連絡してきたことに不振を抱きながらも、暗号が指定したレストランに辿り着くとキャリントンの姿があったが、キャリントンは仲介役に過ぎず、トムをNSAのアレクサ・サヴェルと民間軍事会社のサム・レイヴィスに引き合わせる役を果たすとその場を去ってしまう。
サヴェルとレイヴィスは、中東従軍時にトムの命を救った元海兵隊武装偵察部隊員のチャーリー・カヒルが陥っている危機から、彼を救うのに手を貸して欲しいと言うが…。
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匿名に近い形で執筆活動をしている著者による冒険小説シリーズの第1作が本邦初登場です。
元海軍工兵偵察隊の主人公が巨大な陰謀に巻き込まれ、パートナーの助力を得ながら危機また危機を潜り抜けながら真相に迫る…というプロットなりの緊迫感やマニアックな銃器描写など、このジャンルの面白さのツボは押さえているためリーダビリティは高いですが、一方で、登場人物が推理を巡らせるくだりは説明セリフが延々と続くので冗漫に感じてしまい、バランス感覚的には課題が感じられます。
また主人公のトムが、暴力的な世界に再び身を投じることでアイデンティティを保てなくなることを恐れるあまり、事件に対する態度が終始腰が引けたものとなっているせいで、イマイチ燃える展開にならないのが残念だったり、トムの恋人のステラが、キャラクターの立ったとても魅力的な存在ではあるのですが、スーパーウーマン過ぎてご都合主義に感じてしまったりと、素材は良さを調理で生かし切れなかった感の残る、なんとも惜しい作品でした。
恒例の重箱の隅突きですが、せっかく銃器用語辞典を参照して（というか、それをわざわざ名言するってことは、普段はしないのがデフォなの？）、“ウージー”、“シグ”など、日本のガンコミュニティで一般的な表記に倣ってるのに、“シグ・ザウエル”と“シグ・ザウアー”の表記揺れ見逃しちゃうかなぁ(＾ω＾ ;)。
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