《冴木インヴィスティゲイション》が事務所を構えるサンタテレサアパートのオーナーで、冴木親子がしょっちゅう食事の世話になっている、アパートの1階のカフェテラス＜麻呂宇＞のママでもある河野圭子の元に、銀座で画廊を営む幸本吉雄という男が、10年前に亡くなった圭子の夫がしたという1億円の借金の返済を求めてきた。
決して貧しい身の上では無いが、1億円の現金ともなるとアパートを売るしか手が無い圭子に相談された冴木親子は、ひとまず幸本と交渉すべく画廊を訪ねることにする。
対面した幸本は、涼介が私立探偵を生業としていることを知ると俄に興味を示し、そもそも圭子に返済を迫る必要にかられた金についても当てが出来たので、借金のことは無かったことにすると言い出し、その交換条件として、涼介に自分の代理としてあるものを代金と引き替えに受け取ってきて欲しいと持ちかける。
胡散臭い話と承知しつつも圭子のため、自分たちのため条件を受け入れた涼介は、隆を伴い取引先として指定された赤坂のホテルの部屋に向かうが、相手の男は冴木親子を出迎え、荷物がホテルの駐車場に駐めたレンタカーの中にあることを告げた途端息絶えてしまう。
目的だけは果たそうと死んだ男の部屋を物色してレンタカーの鍵を手に入れた冴木親子が車の中で見つけたのは、籠の中で安らかに眠る赤ん坊の姿だった…。
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高校生＜アルバイト探偵シリーズ＞ももう第5段。例によってバスタイム読書で読了。
これまで結構危ない橋を飄々と渡ってきた隆クンですが、今回、涼介に恨みを持つ右翼の大立者（ところでこの大立者、どう考えても「戸締まり用心、火の用心」の人がモデルだけど
、連載当時モンダイにならなかったのかしら？(^_^;)）の手に落ち、建築途中で放棄され軌道が途中までしかないジェットコースターに乗せられるという拷問を受け、王女ミオを救う冒険の際に経験したヘリの墜落から高所（というか墜落か）恐怖症になってしまっていたことから恐怖に耐えきれず、ついに敵に屈服してしまうという恥辱を味わうハメに陥ってしまいます。
そしてそこからどう立ち直るか？ という隆が一皮剥ける姿を主軸に、大戦中ナチスがユダヤ人から略奪した美術品を巡り、日本の右翼とモサドのエージェント、ネオナチが三つ巴の争いを繰り広げるという大風呂敷なストーリィが相まってなかなかの読み応え。ある意味、シリーズ中、最もハードボイルドしたエピソードに仕上がっています。
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